と、電話が鳴った。動物病院からだ。どうしたんだろう。ハナに何かあったのだろうか。不安な気持ちで受話器を取ると、不機嫌そうな先生の声が聞こえた。
「すぐに迎えに来て下さい。」
「何かあったんですか。」
「暴れてるんです。連れて帰ってください。」

あわてて病院に飛んで行くと包帯を巻かれカラーを付けられたハナが待っていた。
「手術は上手くいきました。」
手術中の写真と摘出した腫瘍を見せてもらいながら、先生は経過を詳しく説明してくれた。
ハナを抱いて待合室に戻る。ハナは吠えまくり、暴れまくり、大変だったらしい。傷口が開くと困るからと、鎮静剤を打たれ、ぐったりしている。
捨てられると思ったのだろうか。そういえば、家に来てから一度もひとりで外泊したことがないもんな。キャリーに入れられて置き去りにされた記憶がまだ残っているんだ。ハナの心の傷は思ったより深いんだね。

家に戻るとゲージが用意されていた。傷口に管が入っているので、しばらくは隔離だ。ごはんはどうしよう。
今朝から何も食べてないけど、食べさせていいんだろうか。聞いてくるのを忘れてしまった。

夏芽がごはんの催促をするので、ハナにもふやかしたドッグフードを差し出したら、すごい勢いで飛びついた。カラーが邪魔して上手く食べられない。そんなに引っ張ると傷口が開くよ。食欲があるなら大丈夫だね。あとは、検査結果を待つばかりだ。良性だといいな。
ひと山超えたおとーちゃんは、安心して眠りについた。ハナと一緒に走っている夢を見ながら。