
おかーちゃんが、おとーちゃん相手におしゃべりをしていた。
「もう、8月が終わっちゃうのね。みんな明日から学校ね。そういえば、小学生の時の林間学校でオリエンテーリングをやったわ。」
「おかーちゃん、オリエンテーリングって何?」
「自然の中でね、地図を持って目的の場所に行くのよ。ポイントが決まっていたりすることもあるの。宝探しをしているみたいで楽しかったわ。」
へ〜、そうなんだ。じゃあ、次の4ワン会議は、それやろうかな。
と、いうわけで、4ワン会議の議題は変更になった。
「オリエンテーリングぅ!」
ハナちゃんは、ドラえもん風に宣言した。

おかーちゃんが、準備をしてくれた。
「エルモちゃん、いちごちゃん、ハナちゃん、夏芽ちゃん、出発点はここね。」
ブリキのロボットさんが、ハナちゃんたちを迎えてくれた。
「ゴールは、お昼を食べるレストランね。ルートは自分で探してね。でも時間内に着かないとお昼ごはんは無しになるわよ。」
お昼ごはん無しになるかも、と聞いて、やる気スイッチが入ったのは、ハナちゃんといちごちゃんだ。
「じゃあ、出発!行ってらっしゃ〜い!」

「さあ、行こう!あれ?夏芽ちゃんがいない・・・」
夏芽ちゃんは、ロボットさんの下に座り込んでいた。
「わたち、このロボットさん、気に入ったわ。おうちに持って帰りたいわ。」
「夏芽ちゃん!そんなとこに座ってないの!お昼ごはん抜きになっちゃうよ!」
「わたち、別にそれでもいいわ。」
ハナちゃんは考えた。夏芽ちゃんは、ごはんじゃ動かないんだ。
「夏芽ちゃん!おかーちゃんにナデナデしてもらえなくなるよ!」
「わたち、行くわ!」

ハナちゃんたちは、森の中を進んだ。
「あ、道が分かれている。どっちかな。左に行ってみない?」
「右じゃないかしら。」
エルモちゃん、いちごちゃん、夏芽ちゃんは、右に行きたがった。
「困ったな。そうだ、ミツバチさんに聞いてみよう。」

ハナちゃんは、屋根の上に草を植えて青いおうちを設置している日本ミツバチさんに道を尋ねた。
「ミツバチさん、ゴールのレストランはどっちか知ってますか?」
「ぶ〜んぶ〜ん、その先に働き者のカエルさんがいるから聞いてごらんなさい。ぶ〜んぶ〜ん。」

ハナちゃんたちは、カエルさんに会いに行った。
奥ではダックスさんたちが鉢植えの手入れにいそしんでいた。

「ああ、あのレストランね。行き方?白ヤギのチョコさんが知ってるよ。」

ハナちゃんたちは、チョコさんに会いに牧草地に行った。
「うわ〜、あたり一面みどり色だ!」
「あれ、今度はエルモちゃんがいない・・・」

「ハナちゃん、ここお花畑もあるわ。このオレンジのお花、気に入っちゃった。わたし、ここにいるわ。」
「エルモちゃん、お昼がね、、、」と言いかけてハナちゃんは気がついた。
エルモちゃんもごはんじゃ動かないんだ・・・
「エルモちゃん!うちのおかーちゃん、お持ち帰り用のおみやげを買ってきてたみたいだよ。」
「わたし、レストラン、行くわ。」
ハナちゃんは、ホッとした。

シロヤギのチョコさんは、気持ちよさそうに日向ぼっこをしていた。
「チョコさん、こんにちは。ここは緑がきれいですね。」
「そうなの。これ全部食べ放題よ。一緒にどう?」
食べ放題と聞いてハナちゃんといちごちゃんのお耳はピクッとなった。
「ハナちゃん!レストラン行くんでしょ!」
夏芽ちゃんは、ハナちゃんのお尻を突っついた。
「そうだった・・・チョコさん、レストランの行き方を教えてもらえますか?」
「青い椅子を目指して行ってごらんなさい。すぐに分かるわよ。」
ハナちゃんたちは、歩いた、歩いた、歩いた。
夏芽ちゃんはナデナデを目指して、エルモちゃんはお持ち帰りを目指して、ハナちゃんといちごちゃんはランチを目指して、一生懸命歩いた。

「あ、青い椅子だ!レストランだ!エルモちゃん、いちごちゃん、夏芽ちゃん、ゴールだよ!」
ハナちゃんたちはジャンプして喜んだ。
「おかえりなさい。頑張ったわね。」
おかーちゃんとママさんが笑顔で迎えてくれた。
「楽しかったね!」
「いっぱい歩いたね!」
「お友達が増えたわ!」
「また来ようね!」
帰りの車の中でハナちゃんと夏芽ちゃんは同じ夢を見た。
広い草原で、たくさんの動物さんたちとピクニックをする夢だ。
クマさん、キリンさん、ヤギさん、ヒツジさん、みんなそれぞれおやつを持って参加している。
おやつは自分の分じゃなくて、みんなの分だった。不思議なことにいくら食べても減らないんだ。
「うわ〜、山のようなおやつとどこまでも広がる草原だ。なんて素敵なんだろう。おとーちゃんとおかーちゃんも連れてこなきゃ。」
夏休み最後の日。ハナちゃんと夏芽ちゃんは素敵な思い出を作った、、、