限定ものにすこぶる弱いおかーちゃん、ハナちゃんを連れてカフェに行くことにした。
「夏芽ちゃんはツメ切りに行っているけど、まあたまには一人っ子もいいかもね」
着いたところは、わんこメニューがめちゃめちゃ充実しているカフェである。

10月も末だけど、今日は過ごしやすい秋晴れだ。おかーちゃんは外の席に座ることにした。
さて、ここのカフェ、わんこメニューは人間メニューと同じくらい沢山ある。
「ハナちゃんは、この大きなバースデーケーキがいいな。量が多い? そんなことないよ。これくらい楽勝さ」

大きなケーキはあえなく却下され、おかーちゃんにはカボチャのシフォンケーキ、ハナちゃんには紫芋のハロウィンケーキが運ばれてきた。
「まあ、この紫芋、美味しそう」
思わずつぶやいたおかーちゃんに、お店のおねーさんは答えた。
「味はあまりないですけど、人間も食べられますよ」
途端、おかーちゃんの目つきが変わったのをハナちゃんは見逃さなかった。
「やばい。おかーちゃんに食べられちゃう前に何とかしなきゃ。今日はライバルの夏芽ちゃんがいないからゆっくり食べられるかと思ったのに甘かった」
ハナちゃんは紫芋のケーキをじっと見つめ、おかーちゃんが「味見♡味見♡」と手を伸ばした瞬間、ケーキに飛びついた。
「グワッ、グワッ、グワッ!」
ケーキは3秒でお腹に入った。
「はあ、今日もあっという間に楽しみが終わってしまった」
ハナちゃん、おやつをのんびり食べられる日は、なかなか来ない。