
「ほらほら、あったわよ」
おばーちゃんが押入れから何か出してきた。
手に持っているのは、おかーちゃんに頼まれた手ぬぐいだ。
ハナちゃんは、やっと抜糸が済んだ。
これで頭に巻かれているウザいグルグルとはお別れだ!と喜んだのもつかの間だった。
「あと3日はそのまま巻いといてくださいね。取れそうになったら日本手ぬぐいを半分に切って巻いてください。縫ったところをかいてしまうと困りますから」
獣医先生はハナちゃんの糸をプチン、プチンと切りながら言った。
おかーちゃんは楽しそうにハナちゃんの頭に手ぬぐいを巻いた。
「あ〜ら、可愛いじゃない♡ おっきなリボンみたいよ♡ ハナちゃんだってたまには女の子らしくしたいわよね」
したくないよ!頭のグルグルが取れるんなら、男らしいって言われても構わないよ!
ハナちゃんは、送られてきたお見舞いの生肉を前にして吠えた。
「取ってくれ〜、ワオ〜ん。早く肉を食わせ、ワオーン!」
「秋の夕暮れにハナの遠吠え、風情があるわぁ」
おかーちゃんは、ひとり秋の風を楽しんでいる。