
梅が満開と聞いたので、ハナちゃんは、おとーちゃんとおかーちゃんを連れて梅見に行った。
気が付くと、おかーちゃんがいない。
「あれ、おかーちゃんどこに行っちゃったのかな」
ハナちゃんと夏芽ちゃんをおとーちゃんに預け、おかーちゃんは馬舎に向かって走っていた。
「はーい、もぐもぐタイム始めまーす!」
係のおねーさんの声が響いた。
おかーちゃんは、子供に混ざって、馬に人参をあげている。
「ねえ、夏芽ちゃん。人参をあげてるの、おかーちゃん以外はみんな子供だよ」
「ハナちゃん、知らないの? イケアで子供用のカレーを注文して、『それはお子様用です』ってレジで言われたとき、おかーちゃん、なんて答えたと思う? 『精神年齢は子供です』って言ったのよ!」
「それでどうなったの?」
「レジの人、苦笑して、カレーを売ってくれたわ」
「まあ、確かに本当のことを答えてるな」
もぐもぐタイムが終わり、おかーちゃんは満足そうな顔をして戻ってきた。
「おかーちゃんが人参あげたお馬さん、可愛かったわあ。隣の茶色い子は、天皇賞で勝って5億稼いだお馬さんなんだって」
「え?なんだって?天皇賞で勝った?5億?その馬がここにいるの?」
今度は、おとーちゃんの目の色が変わった。
おとーちゃんは、ハナちゃんと夏芽ちゃんをおかーちゃんに押し付け、馬舎へ飛んで行った。
「はあ、いつになったらお散歩させてもらえるのかな」
梅見はいつの間にか、馬見に変わっていた。