
海は信じられないくらいキレイだった。
お天気がよくて風もない。空には雲がポッカリと浮かんでいる。
白い波の向こうでは、青と緑がグラデーションを成している。
夏芽ちゃんのカユカユが悪化した。
もう大丈夫と思ったのに、夏にここまでひどくなったのは初めてだ。
「やっぱり海に行く!」おかーちゃんが言った。
海水浴場は全面閉鎖になっている。
「夏芽ちゃんが泳ぐのは禁止じゃないでしょ」
夏芽ちゃんのカユカユは海で良くなるんだ。
平日休みを満喫しようと朝からゴロゴロしているおとーちゃんにお弁当を作らせ、
海行きは決行された。
貝を拾っている親子連れや波打ち際を走るワンはいたけど、いつもよりは人が少ない。
「それにしてもキレイだわ。ゴミが落ちていないし、海藻も浮いていないなんて。
8月も末なのにクラゲもいないわ。
幼稚園の時から来てるけど、こんなにキレイな湘南は初めてよ。
あー、水着持ってくるんだった」

「さて、夏芽ちゃん、ザブザブしようか」
おとーちゃんは、夏芽ちゃんを抱えて海に入って行った。
夏芽ちゃんは、水が大好きである。
お散歩中に水たまりがあると、バシャバシャ入って、おかーちゃんに悲鳴を上げさせる。

おとーちゃんに抱っこされながら、前脚を動かして泳いだつもりの夏芽ちゃん、エンジンがかかった。
「ちょっと遊びに行ってくる」
夏芽ちゃんは、走り出した。
「そっち行ったらだめだよ〜」
おとーちゃんは、慌てて追いかけた。
これを3回繰り返し、夏芽ちゃんは、やっと戻ってきた。

「ハナちゃん、あっちでマーローのプリン売ってたわよ」
「ほんと?」

「プリンの匂いがする、、、」
ハナちゃんがよだれを流していると、おかーちゃんが言った。
「そろそろ帰りましょうか」
「えー、マーローのプリン、、、」
今年初めての海は、あっという間に終わってしまった。
マーローのプリンも買ってもらえなかった。
「夏芽ちゃん、カユカユの真似してよ。そしたらプリン付きで海に行けるよ」
「了解♡」
ハナちゃんは、次の海計画を立て始めた、、、