
「どうして夏芽ちゃんからリンゴを買ったかって? それは、魔女さんを呼び出すためさ」
毎年この時期になるとハナちゃんはハロウィンの撮影に駆り出される。
衣装を着たままお庭を散歩していたら、隣の駐車場に住んでいる黒と黄色のシマシマ猫さんに呼び止められた。
ついこの間まで魔女さんのところでお手伝いをしていたらしい。
「ハナちゃん、もうすぐハロウィンだね。ところで魔女さんに会いたくない?」
ハナちゃんのお耳はピン!と立ち、おめめは大きく開かれた。
「もちろん、会いたいよ!」
そうとなったら、早速準備開始だ。
「え〜と、必要なのは、りんごと衣装と呪文ね」
ちょうど良いことに、夏芽ちゃんがリンゴを売っているじゃないか!
ハナちゃんは、撮影で使った衣装を着て、夏芽ちゃんから買ったリンゴを輪に並べ、その中に入った。
「次は呪文か。マハリクマハリタテクマクマヤコンエロイムエッサイム〜」
ボンっ!
真っ白い煙があたり一面に立ち込め、その中にはホウキに乗った魔女さんが現れた。

「何か用かね?」
黒猫を連れた魔女が上目遣いにハナちゃんを見た。
「あの〜、魔法を使えるようになりたいんです」
「ほー、黒と白とどっちの魔法を所望かえ?」
「え〜と、じゃあ黒いのをお願いします」
「それで、代わりに何を差し出すのかね。目玉かね、その大きなお耳かね? おや、立派な前足だねえ。それを一本もらおうとしようか」
ハナちゃんは、固まった・・・

その頃、おかーちゃんからツナ缶をもらいながら、シマシマ猫さんは思い出したようにつぶやいた。
「そういえば、黒魔法を選んじゃダメだよって言わなかったな。ハナちゃん、目玉を取られちゃうかも。目玉の醤油煮は魔女さんの大好物だしな」
ハナちゃん、危うし・・・