
夏芽ちゃんが引き寄せたサクランボは、いちごちゃんからの贈り物だった。
「ハナちゃん、こんにちは。こんどはちゃんとカードをつけたから読んでね」

漢字を読み間違えたハナちゃんのために、カードはひらがなで書かれていた。
「よし! おとーちゃん、聞いて!」
ハナちゃんは、メッセージを読み上げた。
「は・つ・も・の・を・た・べ・る・と・な・が・い・き! するんだって!」
「そうなんだ。じゃあ、ハナちゃん、サクランボ食べていいよ」
「やった!!!」
ハナちゃんは、箱をのぞき込んだ。
「あれ? いつもは2段並んでいるのに、今年は一段しかないね。おとーちゃん、昨日1段分食べたでしょ?」
「バ、バレた、、、」
「まあ、いいや。残りは全部ハナちゃんと夏芽ちゃんでいただくから」
ハナちゃんは、大きな口を開けた。

と、そこへおかーちゃんがやってきた。
「待ったぁ!!! ワンはサクランボの種を食べたらダメなのよ!」
おかーちゃんの叫び声を聞いて、おとーちゃんはサッと手を引っ込めた。
カツン、、、
サクランボを空振りしたハナちゃんの歯音だけが、静かな部屋にむなしく響き渡った、、、