
「ここ、どこ?」
車に乗せられ、ひと眠り。気がついたら、造り酒屋の前にいた。
「飛騨高山よ。夏芽ちゃん、来るの初めてね」
おかーちゃんが言うには、数十年前におとーちゃんと来た思い出の地らしい。
「あら、試飲やってるじゃない。ちょっと一杯いただこうかしら」
夏芽ちゃん、地酒をなめたのは良いが、すっかり酔っぱらった。
「うい〜、ヒック、ヒック♡」

千鳥足の夏芽ちゃん、こてん、とひっくり返った。
「おとーちゃん、わたち、歩けない。今日はカートないの? じゃあ、そのカゴ買って」
「仕方ないなあ」
夏芽ちゃんは、カート代わりのカゴを買ってもらった。

「あら、これ、なかなかいいじゃない」

おとーちゃんは、おかーちゃんのカメラを借りて写真を撮っている。
「ヒックヒック♡ いよっ、おとーちゃん、いいおとこ! 写真うまいねえ♪」
夏芽ちゃん、ごきげんである。

朝市に行ったら柴ちゃんがいた。お鼻をくっつけてご挨拶である。
「なんか、酒臭くない?」
「ばれた?さっき一杯引っ掛けたのよ。でね、歩くのがかったるいからカゴに入っているの」

夏芽ちゃん、重いんだけど。少し歩かない?」
おとーちゃんにカゴから出された夏芽ちゃん、まっすぐ歩けない。
「おーとっと、おーとっと。どうしてこの道はこんなに広いのかしら?」
「それはね、まっすぐ歩かないで道の端から端まで歩いているからよ」
「おーとっと、おーとっと。どうしてなかなか前に進まないのかしら?」
「それはね、前に歩かないで横に歩いているからよ!」
おかーちゃんは、あきれ顔である。

夏芽ちゃんは、再びカゴに入れられた。
「夏芽ちゃん、禁酒!」
ついにおかーちゃんから禁酒令が出された。
「いいも〜ん。次はまたたびで酔っ払うも〜ん」
「ワンは、またたびで酔えないわよ。あれは猫さん用」
「酔えるも〜ん。わたち、経験してるも〜ん」
猫さんたちと暮らしていたことのある夏芽ちゃん、強気である。
「矢でも鉄砲でも持ってこ〜い!」
夏芽ちゃん、酒癖が悪いのが判明した、、、
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